前回(第2回)のコラムでは、坂口の間取り相談の流れと納品物をご紹介しました。
「くらしの展開図」をはじめ、坂口の図面には、建築に直接関わる情報だけでなく、使う予定の家具や家電、収納するモノ、身長を再現したご家族の人物シルエットまで寸法入りで描き込んでいます。
なぜ、「建築範囲外」のことをこんなにも描き入れ、検討するのか。今回はその点を掘り下げてお話しします。
家事をする住まい手にとって、間取りと「モノ」は一続き
新築・リフォームでは、ユニットバス・システムキッチンなどの「住宅設備」、ドアなどの「建具」、造り付け収納やコンセントなど、いわゆる「建築工事の範囲で取り付けるもの」は、ビルダーさんのお仕事の範囲です。したがって、間取りと一緒に、または間取り確定後に、品物の選定と取り付け位置をお施主さまと決めていきます。
一方、引き渡し後に住まい手が持ち込む洗濯機や冷蔵庫などの家電、ベッドやテーブルなどの家具、衣装ケースやランドリーバスケットなどは、ビルダーさんがアレコレと口出ししたり、相談に乗ることは少なく、引き渡し後にお好きにどうぞ…と任されるのが普通です。
これは、ごく自然な役割分担であり、建築側としては、一般的な家具・家電を置けるスペースを確保するところまでが通常の検討範囲でしょう。
でも、実際に物件に住み、家事をする住まい手からすると、「一般的なモノをそれなりに置ける」と「自分たちが使いやすいモノを、使いやすく置ける」では、暮らしの快適度がまったく異なります。
たとえば、洗濯家事なら「洗う→乾かす→たたむ→しまう」は一つの流れですが、同時に各家庭の「洗濯の流れ・やり方」は本当に多様です。洗濯家電の配置はもちろん、自分たちが使うモノ(脱衣後のバスケット、下洗いの洗剤・ブラシ、洗濯ネット、アイロンなど)を使いやすい配置まで考慮された間取りにできると、毎日の快適度がググッと変わります。
だから私の間取り相談では、建築上の「間取り」に検討範囲をとどめず、間取りからモノへ、モノから間取りへ、話題を行ったり来たりしながら、「このご家族が、ここで何を使い、どう家事をするか」を一緒に細かく考えます。
主婦で建築士の私だから目利きできる、住宅設備・家具・収納用品の引き出し
私は、自分自身が長年、2子の育児・家事をこなしてきた兼業主婦(ズボラ成分多め)ですし、日々、間取り相談のお客さまから、多様な家事のお悩み・要望を伺っている身です。
そんな背景から、住宅設備や家電、収納用品の新商品やリニューアルのニュースはすぐ目に留まります。そして、そこからカタログやメーカーサイトを開いて、後ろの「付録」のような細かい文字のページまでついチェックしてしまいます(細か~い一覧表も寸法図の読みときも、建築士なので、苦になりません!笑)。
よくある間取りパターンに無理なく納まりそうか。施工する人は扱いやすそうか。住まい手が行う掃除やメンテナンスはどうか。そして、お値段は妥当か・採用しやすいか。
こうして、私の辛口主婦&建築士の眼力で「コレいい!」と目利きしている住宅設備・収納用品が、私の中には常にストック&アップデートされており、間取り相談での提案にいかしています。
坂口提案の代表例…乾太くん×フィットラック×衣類収納ケースで「みお式」配置
間取りとモノをまたぐ坂口提案の代表例として、大人気・ガス乾燥機乾太くんの配置方法、「みお式」セットプランがあります。これは、乾太くんを、フィットラック「乾太くん専用台」で目線の高さに壁付けし、その下にキャスター付き収納ケースを置くプラン。
乾太くんで衣類を乾燥したあと、収納ケースを引き出して天板で仕分け・たたみ、そのまま収納。たたみ台不要の省コスト・省スペースながら、使いやすい高さかつ「ゼロ歩」で衣類を片づけられます。

このアイディアはもともと、坂口のアメブロ読者「みおさん」が、2022年築のご自宅で造作台を使って実現していたものです。(2022年ごろまで、乾太くんの置き台は、基本的に乾太くん発売メーカー・リンナイ製のシンプルなスチール台か、造作台を作るかの2択でした。)
その後2023年から、リンナイ推奨品(お墨付き)として、乾太くん専用台が住宅設備メーカーから次々と登場したのですが、その中で私の目に留まったのが、重い乾太くんを特許技術のレールで「壁付け」できる、藤山社製の「フィットラック×乾太くん専用台」。
「これなら、既成品なのに身長にあわせた高さで『みお式』できるし、壁付けで足元のスペース活用も自由度が高く、可動棚を追加してストック収納までできるね!これイイ~!」とみおさんと盛り上がり、私が藤山社さんに問い合わせながら部材選定・寸法・配置を検討、図面化しました。
この図面は、みおさんのインスタグラムで配布を行っており、2026年8月現在、のべ500人以上にお渡しされたそうです。現在は、坂口の公式LINEからのご要望でも、図面をお渡しできるようにしています。坂口のアメブロでも何度か紹介し、間取り相談内でも大人気で、数多くのお客さまに採用いただきました。(※ただ推しているだけなので、坂口・みおさんには1円も入りません 笑)
実物を触りたい…!施工性まで確かめたい…!坂口、大阪の藤山社ショールーム訪問へ
このように、フィットラックを使った「みお式」セットプランを勝手に推している私ですが、実は…現物を自分の手で触ったことがありませんでした。(我が家はドラム派で乾太くんなし。施工されたお客さまは全国各地)
そこで2026年夏、思い立って、坂口の活動拠点である愛知から、フィットラックを開発・販売している大阪の藤山社さんをお訪ねしてきました!




乾太くん、壁づけで浮かせて、壁は大丈夫!?
「フィットラック×乾太くん専用台」を紹介すると、ブログの読者さん・間取り相談のお客さまから「あんなに重そうな乾太くん、壁付けで浮かせて大丈夫なんですか?」としばしばお声をいただきます。
乾太くんは本体と衣類を合わせると50kg近い重さになります。これを床に脚のない状態で壁へ固定するのですから、「壁、大丈夫…?乾太くん落ちてこない?」と思うのは当然です。
でも、ご心配なく。フィットラックは、上部に横長のレールを取り付け、そこへ縦の金物を掛ける独自構造。荷重のほとんどを横長のレールで受けるようになっており、特許も取得しています。棚板は60kgの耐荷重が確かめられており、リンナイの「推奨品」として公式カタログにも掲載されています。
…と、知ってはいたのですが、現物を触ってみると、本当に棚板も乾太くんもぐらつきなく、多少ゆすってもみてもビクともしませんでした!すごい。棚板を3本のブラケット(棚受け金物)で支え、乾太くんと棚板を直接留める仕様も実物で確認できて、納得感が深まりました。

そしてもう1つ…今回の訪問で、私が「そのすごさ、ちゃんと分かってなかったー!」と気づいたのは、「下地の自由度」でした。
フィットラック「乾太くん専用台」は、下地の自由度がスゴイ!
「壁に重いものを固定するときは、下地が必要です」これは、新築・リフォームの打ち合わせをするお客さまなら、なんとなーく分かっていらっしゃると思います。体重をかける手すり、重量があるエアコン・全身ミラーなどの位置を決めるときに聞くフレーズですね。
ざっくり説明すると、一般的な住宅(図は木造在来工法)の壁の中には、「柱」や「間柱」など、ビス(固定用のねじ)をしっかり打ち込める場所があります。これが「下地」となる部分です。

重いモノを取り付けたい位置に下地がない場合は、壁を仕上げる前に、該当位置に厚い木材や構造用合板を入れて「下地補強」をします。
例として、乾太くんを壁掛けできるリンナイ推奨品ラインナップから、南海プライウッド社「ガス衣類乾燥機用棚板セット」を取り上げて説明すると…
洗面脱衣室のコーナー設置時など、希望するブラケット(棚受け)の設置位置と柱・間柱の位置が合わなければ、あらかじめ下地補強をしておく必要があります。そして補強した部分にビス止めをすることになるかと。

私はこれまで、藤山社の「フィットラック×乾太くん専用台」の施工も、同様の「下地補強」が基本的に必要だと思っていました。
ところが!ショールームで改めて解説していただくと、これが、うれしい勘違いであることを自覚。
フィットラックの最大の特徴は、上部に設置する横長のレール(FKレール)。そしてなんと、この横長レールの範囲内に1本でも柱・間柱が存在すれば、専用の「化粧板パネル」を組み合わせることで、基本的に、壁を開ける下地補強工事なしで乾太くん専用台を設置し、乾太くんを「浮かせる」ことが可能とのこと!これはビックリです。

フィットラックの面白いところは、乾太くんの真裏や棚受けの位置「ぴったり」に下地がなくても、簡単に対応できる方法があること。
具体的には、仕上がった壁の上から柱・間柱に化粧パネルを取り付け、このパネル自体に新たな「下地」の役目を担わせます。その上に横長レール、縦レール、棚板を取り付け、乾太くん本体も棚板へ固定して施工が完了します。

壁を壊して内部に下地を追加する代わりに、下地の役割を担う化粧パネルを、仕上がった壁の上から取り付けるわけです。壁内に下地を入れるより見た目は落ちますが、白く化粧されているので木材がむき出しになるわけではないし、設置後は大部分が乾太くんの後ろに隠れるので、目立たずなじみやすいと思います。
これなら、補強下地を入れていないリフォームや、新築でも建設途中で設備位置を変えることになってしまい、下地補強と乾太くん設置台の位置がずれてしまうようなケースでも対応しやすいでしょう。フィットラックは住まい手の使い方だけではなく、施工する建築側にとっても自由度が高いなー!と実感できたのでした。
※実際の設置可否は、施工するビルダーさんによる現場確認と判断が必要です。
当然、ほかの会社さんの専用台の良さ(インテリア性や、ビルダーさんによっては特定の会社さんの製品をお値打ちに仕入れられるなど)もあるので、坂口の間取り相談では、乾太くんの台に藤山社・フィットラックだけを勧めるわけではありません。でも、この設置の自由度の高さはしっかり頭に入れておこう!と心新たにしたのでした。
【吉報!】「みお式」用のフィットラック「乾太くん専用台」必要パーツのセット販売が実現
今回の藤山社さん訪問では、もう一つうれしい展開がありました。
これまでフィットラックで「みお式」の乾太くん配置を実現する場合、必要な部材を単品でピックアップし、法人であるビルダーさんなどを通して注文してもらう必要がありました。何度も提案してきた私には分かっていても、ビルダーさんが初めて藤山さんに注文される場合、少し分かりにくい。
そこで藤山社さんに、「多くのお施主さまから好評なので、『みお式』を再現する部材一式を、一つのセットプランとして注文できるようにできませんか?」と相談してみました。すると、ありがたいことにご快諾いただき、現在、「みお式」セットの品番設定と販売に向けた準備を進めてくださっています!
セット名は、「建築士・坂口亜希子 プラン考案」の文言を添えて(照れますね!)、「乾太くん専用台『みお式』セットプラン」となる見込みです。
セット化されることで、法人だけではなく施主自身でも購入できるようになります。2026年10月から受注開始予定、リーフレットも準備中とのこと。準備が整ったらまた改めてご紹介しますので、どうぞお楽しみに!
間取りだけでなく、モノまでふくめた一連の家事を見つめて
家は、間取り図をもとに建築した建物・部屋だけで完成するものではありません。そこにどんな設備を入れ、どんな家電を置き、何をどこに収納して、だれがいつ、どのように動いて家事をこなしていくのか。住まい手にとって、間取りと「モノ」は一続きです。
だから私の間取り相談では、建築範囲の間取りだけではなく、住宅設備、家電、家具、さらに収納用品まで一緒に考え、お客さまに合った家事動線が実現できるプランを提案します。
「この設備をどうしても使いたい」「この収納方法を新居でも続けたい」「新居では家事をもっとラクにしたいけれど、何をどう選んで配置するか、イメージがあいまい」。そんなお気持ちも、どうぞ遠慮なくお聞かせください。
間取りからモノへ、モノから間取りへ行ったり来たりしながら、そのご家族に合う暮らし方、その暮らし方を実現できる間取りを一緒に考える。それも、私が間取り相談で大切にしていることです。